クローン病の標準治療 アメリカのNational Guideline

ガン治療で有名な平岩正樹氏が週刊現代で連載している「読む抗ガン剤」を時々読んでいると参考になることが多い。

何時のものか忘れてしまったが、そのコラムの中で平岩氏は「日本では標準治療と呼べるものがない。アメリカではNational Guideline Clearinghouse("NGC")のHPを見れば、誰でも自分の病気ではどのような治療が標準的な治療か直ぐに分かるようになっている」というような内容のこと(うろ覚えなので間違っているかもしれません)を書かれていたので、早速NGCのHPを覗いて見た。 NGCは米国保健社会福祉省(U.S. Department of Health and Human Services)傘下の医療分野研究と質向上を支援する部門(Agency for Healthcare Research and Quality) のイニシアティブにより、作成されたEBM(Evidence Based Medicine)に基づく標準治療を公開している。  当然クローン病についてもManagement of Crohn's disease in adultsという題名で標準治療が公開されている。 NCGに掲載されている標準治療アメリカ消化器学会(American College of Gastroenterology)の標準治療委員会(The Practice Parameters Committee)の指揮の元、シカゴ大学のHanauer博士が取りまとめた『Management of Crohn's Disease in Adults(注意!pdf書類)(American Journal of Gastroenterology Vol96.No.3, 2001)』をNCGのフォーマットに合わせて要訳したものである。 結構面白いことが沢山書かれているので、原文を翻訳(一部要訳)して見たい。。

Management of Crohn's Disease in Adults(注意!pdf書類)(American Journal of Gastroenterology Vol96.No.3, 2001)』


はじめに(Preamble)
標準治療(Guidelines for clinical practice)はこれまで発表された科学的な研究成果をもとに特定の医学的問題に対し、好ましい対処は何かを示すものである。客観的なデータが得られない時には専門家の一致した意見を元にしている。標準治療は専門家でなくとも使えるように考えられている。また標準治療は必ずしも唯一無二の治療法を示しているわけではなく、柔軟なものである。どのような病気に対しても治療には色々な選択肢があるのと同様に医師は患者の症状にあわせて最も適切な治療法を選ぶべきである。 標準治療はアメリカ消化器学会(American College of Gastroenterology)の標準治療委員会(The Practice Parameters Committee)の指揮の下に作られたものである。 委員会は経験豊富な医師と関連部署の人々の協力の下、標準治療を慎重にチェックし、最終稿として、現時点(2001年)で使うことが出来るデータに基づいており、今後科学の発展に伴い改定されるだろう。

序文(Introduction)

クローン病は全ての消化器器官において局所性(focal)、非対称性(asymmetric)、貫壁性(transmural)、そして時々肉芽腫性(granulomatous)の炎症を示す病気で、腸以外の部分での合併症を伴うことがある。 他の西洋化された国と同様にアメリカの発病率(incidence)と有病率(prevalence, 潜在的に発病する可能性がある患者の数の割合)はそれぞれ10万人に5人と50人と推定されている。どの年代の患者もいるが、発病は10代、20代に多く、その点がクローン病を他の炎症性腸疾患とは異なっている。クローン病は医学的に完治する事はなく、症状を抑え、生活の質(Quality of life)を向上させ、一時的な或いは慢性の毒性と合併症を最小限に抑えることが必要となる。負担のある治療ではあるが、殆どの患者は短期再発を繰り返しながらも長期の緩解を維持している。 他の消化器疾患と比べ、比較的低い発病率、有病率であるにもかかわらず、米国でのクローン病に対する内科的外科的治療の総額は年間20億ドル(2000億円)にものぼり、更には新しい治療法の出現により、その金額は増え続けている。病気の多様性とそれぞれの患部特有の治療法の可能性を説明する適切な証拠の量は依然として乏しいのだが、前回97年に標準治療を発表したと比べると、治療法の選択の幅が大きく広がった。今回の改訂は前回同様、重症度に応じた治療法を説明する構成を採る一方で、患部の場所により適当な治療法を改定した。

様々な症状(Clinical Features)
(特に目新しいことも無いため、省略)
診断(Dignosis)
(特に目新しいことも無いため、省略)
悪化させる要因(Exacerbating Factors)


クローン病を悪化させると認められている要因は間欠性の感染症(クロストリジウム・ディフィシレ菌を含む上部気道と腸管感染症)、喫煙、非ステロイド系の抗炎症薬がある。多くの患者がストレスがクローン病を発病、あるいは悪化させていると考えているが、科学的な証拠は無く、異論がある。


病態の判断(Determining Disease Activity)
患部の場所、重傷度、そして腸外の合併症の状態により、治療を選択する。病気の活動状況を測る決定的な基準(gold standard)がないので、重傷度は医学的な判断基準、全身症状そして病気が患者のQOLへ与えるインパクトを総合判断して決める。治療に影響を与える他の要因としては、成長・栄養状態、腸外合併症、副作用、身体機能、社会的感情的支援、そして病気についての教育度合いがある。 CDの活動状況を定義することを複雑化しているのは、この病気の場所と合併症のパタンが一様でなく、過敏性腸症候群(IBS,Irritable Bowel syndrome)の症状が混在する可能性もあることである。病状の程度を示す指標も確立できていない。治験では病気の活動を示す合成指標が医師と患者を結びつける健康状態を測る指標として使われてきた。しかし、臨床の場では余り使われてこなかった。当局も病状をあらわす指標として何を使うかまだ決めかねている。しかしながら、アメリカにおいて最も最近認めれたCD治療はCrohn's Disease Activity Index (CDAI)によって定義された「病状回復(clinical improvement)」、「緩解(clinical remission)」、「瘻孔(fistula closure)」の定義に基づいている。他の研究者は例えば「ステロイド離脱或いは減量(Steroid withdrawal or sparing)」や「手術回避(avoidance of surgery)」を治療のゴールに使っている。しかし、これらの定義は患者と医師の主観が入り込む余地がある。内視鏡的な指標は回腸及び結腸障害及び吻合手術で再発病することを定量化するために開発された。肛門周囲の病気とQOLを評価するために開発された手段もある。一般的にCD治療のゴールは症状を取り除き、できるだけ少ない副作用とできるだけ少ない後遺症を持って患者が良い状態を維持することである。生物剤(biological agents)の利用により、費用の問題は日増しに重要になってきているが、まだ治療の選択には影響を与えてはいない。

仮の定義(Working Definitions)
改訂前の標準治療から開発中のCDの病態を定義する仮定義に変更は無い。
軽・中症状(MILD-MODERATE DISEASE)
軽・中症のCDとは脱水症状(dehydration)、毒性(高熱、悪寒(rigors)、衰弱(prostration))、腹部の圧痛(abdominal tenderness)、痛みのある塊(painful mass)、腸閉塞感(obstruction)、あるいは10%以上の体重減少を伴わず、経口で栄養を摂取できる外来患者を指す。
中・重症状(MODERATE-SEVERE DISEASE)
中・重症のCDとは軽・中症患者向けの治療が効かない患者であるか、高熱、深刻な体重減少、腹痛、腹部圧痛、断続的な吐き気(intermittent nausea)、嘔吐(vomitting)、深刻な貧血(anemia)をともなう患者を指す。
重・激症状(SEVERE-FULMINANT DISEASE)
重・激症のCDとはステロイドが効かず、高熱が続いたり、嘔吐を繰り返したり、腸閉塞になったり、反跳痛(rebound tenderness)、悪質液(cachexia)、膿瘍(abscess)があったりする患者をさす。
緩解(REMISSION)
緩解の状態にある患者とは無症状(asymptomatic)あるいは炎症の後遺症(inflammatory sequelae)が無い患者で、緊急治療(acute medical intervention)が奏効した患者や外科手術により患部を全て取り除いた患者を指す。健康な状態を維持するためにステロイドが必要な患者は「ステロイド依存状態(steroid-dependent)」にあり、「緩解状態にある(in remission)」訳ではない。

管理(Management)
一般的なこと(General)
患部の場所、重傷度、合併症の有無により、治療がことなる。治療に対する反応と許容度により治療のアプローチの仕方は個別的なものとなる。治療の手順としては、まず「急病(acute disease)」に対処し、「緩解」を維持することになる。外科手術は酷い狭窄、化膿性の合併症、或いは薬で対処できない難治性の場合である。麻薬性の鎮痛薬は手術中、またはその前後以外は使うべきではない。なぜなら慢性病であるため濫用の危険があるためである。

活動期の軽・中症状(Mild-Moderate Active Disease)

回腸(ileal)、回結腸間?(ileocolonic)、大腸(colonic)型はアミノサリチル酸(aminosalicylate: メサラジン(mesalamine)3.2-4.0gかスルファサラジン(sulfasalazine)3-6gを一日数回に分けて)を服用する。またはスルファサラジンが効かない患者の中にはメトロニダゾール(metronidazole:フラジール)10-20mg(1日1kg当たり)が効く事がある。シプロフロキサシン(ciprofloxacin)を1日当たり1g服用することもメサラジン同様に効果的である。また近い将来、回腸部に的確に放出できるブデソニド(budesonide)が代替薬として利用できるようになるだろう。

=上記治療にかかわる治験=
*スルファサラジンとメサラジン*
70年、80年代にアメリカとヨーロッパで管理された大規模比較治験(large controlled clinical trials)が行われ、活動期の回結腸間?(ileocolonic)、大腸型に対し、スルファサラジンの効果が偽薬(placebo)を16週間に渡って上回った。ステロイドほどの効果は無かったが、約半数の患者が緩解を導入できた。スルファサラジンは活動期の小腸型に対してコンスタントな効果は無かった。まだスルファサラジンを他のアミノサリチル酸と比較する十分な治験はこれまでなかった。異なる形であるメサラジンも1日3.2-4.0gの服用が軽・中症の患者の急性治療(acute treatment)に効果的である。しかし、全ての治験においてメサラジンの効果は偽薬を上回っていない。回腸、回結腸間?(ileocolonic)、大腸型、それぞれのための治療薬として、区別するためにメサラジンの型を比較するだけでは不十分であった。実際の臨床の場では普通に使われているにもかかわらず、遠位結腸用の局所薬を決めるために、直腸用のメサラジンも直腸用の副腎皮質ステロイドも比較治験では十分な検討がされていない。

*メトロニダゾール*
偽薬との比較において、1kg当たり10又は20mgのメトロニダゾールは回結腸炎(ileocolitis)と大腸炎に対して回腸型に対してよりも効果的であった。参加者の数(sample size)は服用に対する反応を決めるには十分ではなかった。メトロニダゾールは又北欧での16週間の治験において、スルファサラジンと比べられた。当初の反応は似たようなものであったがスルファサラジンが効かなかった患者にはメトロニダゾールが効く事が多く、またその逆も真であった。メトロニダゾールについては長期のデータがない。しかし末梢神経障害(peripheral neuropathy)の副作用があり、症状や知覚障害(paresthesias)の兆候をモニターする必要性がある。

*シプロフロキサシン*
1日当たり1gのシプロフロキサシン服用は6週間という短い期間の比較治験(controlled trial)において、メサラジン4g服用と比較された。それぞれの薬を服用した患者のうち、50%の患者が緩解期を導入できた。比較方式でない治験(uncontrolled trial)では、シプロフロキサシンとメトロニダゾールの両方を服用した場合の方が、どちらか片一方のみを服用した場合より良い結果を得られた。一方で複数の抗マイコバクテリア薬を服用する比較治験を行ったが、短期、長期とも効果は認められなかった。

*ブデソニド*
幾つかの国では、的確に放出できる(controlled-release)ブデソニド製剤(FDA未承認)が回腸末端部と、或いは又右側大腸を患部とする軽・中症CD患者向けに使われている。

*プロトンポンプ阻害薬、抗生物質*
上部消化器官(食道、胃、十二指腸、空腸、回腸)を患部とするCD患者の治療の根拠となる証拠は不十分である。上部消化器官型のCD患者は比較方式でない治験において、プロトンポンプ阻害薬で胃酸を抑える治療が効果があったと伝えられる。空腸回腸部分は小腸内バクテリアの増えすぎによって複雑化しており、複数の抗生物質をかわるがわる服用することが効果がある。 初期の治療が奏効したかどうかは、数週間以内に評価されるべきである。活動期の治療は症状を抑えることにポイントを置くべきであり、さもないと回復は失敗する。緩解を迎えた患者に対しては(緩解)維持療法を施すべきである。同じ症状が続いた場合には、軽・中症患者向けの他の方法を試すか、中・重症患者向けの治療に切り替えるべきである。


中・重症状(Moderate-Severe Disease)
中・重症患者はプレドニゾロン(prednisone)40-60mg/日かブデソニド(budesonide)9mg/日(FDA未承認)を症状がなくなるか、体重増加が始まるまで(通常7-28日間)服用する。感染症にかかったり、膿瘍があったりした場合には、適切な抗生物質を服用するか、(皮膚を破るか手術によって)排膿する。インフリキシマブ(レミケード, infliximab)は効果的な補助薬であり、ステロイド依存であったり、ステロイドが効かない患者のステロイドの代替薬となろう。

*ステロイド*
クローン病治療のためにどの程度の量のステロイドを服用し、どのようなスケジュールで服用するのかを判断するための適切な研究はされたことがない。比較可能な治療効果については、偽薬との比較治験とアクティブコンパリター治験(Active-Comparitor trials)において、およそ50〜70%の患者がプレソニドを受け取り、その患者は0.5〜0.75mg/kg(又は40mg)/日を服用すると8〜12週間に渡る緩解を得ると言う報告がある。治療効果があった時は反応の速さと完璧さによって服用量を減らしていく。一般に20mgまでは毎週5〜10mgづつ減らしていき、その後は完全にやめるまで2.5〜5mgづつ減らす。 ブデソニドの腸溶性錠剤(enteric-coated formulations)を一日9mg服用することは活動期の回腸と回盲部型CDに対して、偽薬よりも、またブデソニドかプレドニゾロンを一日40mg服用するよりも効果があるとの評価を受けている。ステロイド関連の副作用はブデソニドの短期使用の方がプレドニゾロンより少ない。しかし、ある程度、副腎皮質機能を抑制することが予期される。 副腎皮質ステロイドで治療された患者の50%以上は「ステロイド依存状態(steroid-dependent)」か「ステロイド抵抗状態(steroid-resistant」となる。特に喫煙者と慢性疾患の患者にその傾向が顕著である。短期で見ても又長期で見ても副腎皮質ステロイドにアミノサリチル酸を加えることに意味は無い。

*免疫抑制剤*
アザチオプリン(azathioprine, イムラン)メルカプトプリン(mercaptopurine, 6-MP, ロイケリン)は成人のステロイドと併用して効果があるが、効果が出てくるまで4ヶ月程度かかる。アザチオプリン、またはメルカプトプリンについて用量応答研究はなされていない。メルカプトプリンを代謝する主要な酵素であるTPMT (Thiopurine methyltransferase)(注意!pdf書類)の遺伝的多型(genetic polymorphisms)はメルカプトプリン代謝(6-thioguanine)の測定による治療を制御する可能性を与える。アザチオプリン2.5mg/kgの経口服用の効果が治験で明らかになってはいるのだが、最適な服用と治療観察のやり方が未だに確立されていない。アザチオプリンの静脈注入がアザチオプリン2mg/kgの経口服用より優れていると言うことは無い。非経口、すなわち皮下或いは筋肉注射による週に1度25mgのメトトレキセート(methotrexate)の投与はまたステロイド依存症の患者がステロイドを減らすことを可能にする。

*インフリキシマブ*
インフリキシマブを用いた抗キメラモノクローナル抗TNFα抗体療法(Chimeric anti-TNF monoclonal antibody therapy)はアミノサリチル酸、抗生物質、副腎皮質ステロイド、免疫調整剤が効かないCD患者の治療に効果がある。5mg/kgを投与した患者の80%以上に4週間目において症状の改善が見られ、50%以上が緩解を迎えた。再発(relapse)を防ぐため、投与の継続が必要であろう。インフリキシマブの投与は血清病のような(serum sickness-like)遅延型過敏反応がすぐあるいは遅れて出てくることがあり、特に最初の投与から12週間以上間隔があいたあとに投与した場合に注意が必要である。他の副作用としては抗キメラ抗DNA抗体ができてしまうことである。同時免疫調整(concurrent immunomodulation)が果たして治療効果をあげているのか、或いは抗キメラ抗体に対する免疫原生(immunogenicity-一度かかったら終生免疫ができるか,すぐに免疫ができるが失われるか,何度もかからないと免疫ができないか-注byCD40)を減らしているのかはまだ分からない。 *栄養療法* 成分栄養療法(elemental diets)と恐らく液状のポリメリックダイエット(liquid polymeric diets:アミノ酸ベースの栄養剤がEDでたんぱく質ベースの栄養剤がPD-注byCD40)は医学的効果があり、活動期のクローン病の炎症を減らすが、長期的に病気の辿る道を変えることはない。また大人がそのような(食事)制限を守ることは難しく、コストも多くかかる。エリミネーションダイエット(自分に合わない食材を取り除いた食事-注byCD40)は成分栄養療法の後の再発を防ぐのには効果的でない。

重・劇症状(Severe-Fulminant Disease)
経口ステロイドやインフリキシマブが効かず、高熱、頻繁な嘔吐、腸閉塞、反跳痛(rebound tenderness=圧迫を離したときの痛み)、悪液質(cachexia)などの症状や、膿瘍(abscess)の症状がある患者は入院すべきである。腸閉塞や圧痛のある腹部腫瘤(tender abdominal mass)がある患者に対しては手術の相談が必要である。単純な膿瘍を除外するため、腹部腫瘤(abdminal mass)は超音波かCTスキャン(Computerized tomography)で検査すべきである。膿瘍は経皮的、あるいは外科的に排出しなくてはならない。単純な膿瘍が除外され、もし患者が経口ステロイドを投与されていたとしたら、40-60mgのプレドニソンに相当する非経口副腎皮質ステロイドを1日数回に分けて、或いは連続注入する。ステロイドに加えて、中心静脈栄養(total parenteral nutrition)には特に決まった役割はない。5-7日後に栄養状態を維持できない患者に対し、成分経腸栄養や非経口的高カロリー栄養法(parenteral hyperalimentation)による栄養サポートが提示される。 流動食あるいは電解質(electrolytes)を使った支持療法或いは蘇生療法は脱水状態にある患者に施される。貧血や激しい出血が認められる場合、輸血が必要である。腸閉塞の兆候がなく、激しい腹痛もない状態にあり、可能なら経口食も可能であろう。より激しい症状を示したり、腸閉塞があるなら腸を休めて中心静脈栄養を処置すべきである。腸閉塞は炎症による狭窄によるものや繊維化した狭窄や癒着を起こしていることが原因かもしれない。検査(炎症個所の存在、或いは不在)と事前のレントゲン結果により違いを明らかにできる。癒着性の腸閉塞は経鼻胃管からの吸引(nasogastric suction)によって往々にして治療可能であるし、熱や反跳痛がない場合、緊急手術は通常必要ではない。繊維化が原因の場合、最初は腸を休めることと副腎皮質ステロイドが効くが、ステロイドを減量することにより再発することもよくある。炎症の塊(inflammatory mass)がある場合、副腎皮質ステロイドの静脈注射とともに、各種抗生物質が速やかに処方されるべきである。 副腎皮質ステロイドの静脈注射は重・劇症のCD患者に処方される。もっとも効果のある服用量、あるいは服用スケジュールを定義するための研究はまだ行われたことがない。しかし、多くの医師はプレドニゾロン40-60mgに相当する副腎皮質ステロイドを何度かに分け、或いは連続で静脈注射している。副腎皮質ステロイドの静脈注射の代わりに、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の静脈注射を使うことができる。しかし、副腎出血(adrenal hemorrhage) の合併症の可能性がある。ステロイドの静脈注射に反応しない患者はシクロスポリンの静脈注射やタクロリムスの静脈注射が効くかもしれない。しかし比較治験や服用反応のデータはない。重度のCD患者治療にインフリキシマブがどれほど実効性があるかという点についてのデータはない。 副腎皮質ステロイドの静脈注射やシクロスポリンの静脈注射が功を奏した患者は徐々に経口での治療に移行、離脱する。治療がうまくいかなかったり、症状が悪くなったら外科手術を考える。

肛門周囲の疾患(Perianal Disease)
深刻な膿瘍はシートン法を使うにしろ、使わないにしろ、外科的に排膿した方が良い。非化膿性(Nonsuppurative)或いは慢性的な瘻孔形成、或いは肛門周囲の痔裂は抗生物質か免疫抑制剤かインフリキシマブで治療する。

*肛門周囲膿瘍と免疫抑制剤*
肛門周囲あるいは直腸周囲膿瘍は外科的に排膿する必要がある。クローン病による非化膿性の肛門周囲の合併症に対してはメトロニダゾール単独、あるいはシプロフロキサシンとの併用が効果的である。比較治験はないが、再発を防ぐためには継続的な治療が必要であるようだ。抗生物質の長期投与の安全性は確立されていない。またメトロニダゾールを処方されている患者は末梢神経障害がないかどうか継続してモニターされるべきである。免疫抑制剤についても比較治験のデータはない。しかし、シクロスポリンやタクロリムスによる短期治療は効果があると言われている。長期データはない。またほとんどの患者はアザチオプリンかメルカプトプリンによる長期治療が必要である。後者はクローン病の肛門周囲合併症に対して比較治験が実施されたことはない。しかし、いくつかの報告書で肛門周囲の疾患が長期にわたり改善されたとの記述がある。

*瘻孔とインフリキシマブ*
偽薬との比較治験において、抗生物質や副腎皮質ステロイド、或いは免疫調整剤が効かなかったクローン病患者の瘻孔が5mg/kgのインフリキシマブ連続投与(0,2,6週)によって閉鎖した。全体の68%の患者は少なくともひとつの瘻孔が閉じ、55%の患者は少なくとも4週間の間すべての瘻孔が閉じた。瘻孔閉鎖の期間は平均して12週間であった。再投与か経口薬や免疫調整剤への移行するのか検討しなくてはならない。

緩解維持の治療(Maintenance Therapy)
副腎皮質ステロイドはクローン病の再燃を防ぐための長期治療薬として使われるべきではない。副腎皮質ステロイドで対処した後には、アザチオプリン(azathioprine, イムラン)メルカプトプリン(mercaptopurine, 6-MP, ロイケリン)が緩解期維持に有効である。腸を切除した後の再燃の可能性を減らすために、メサラジン(mesalamine)、あるいはアザチオプリンかメルカプトプリンを服用すべきである。 クローン病の緩解期を長期的に維持する治療は未だに証拠を収集中の段階にある。まず、「ステロイドによる維持」対「ステロイド依存」いう問題について依然として混乱がある。「ステロイドによる維持」とは一定の患者間において治験でも認められた再燃を防ぐための治療であり、「ステロイド依存」とはある一定以下にステロイドの服用量を減らすと再燃してしまう個別の患者に対する医学的見解である。 副腎皮質ステロイドによって緊急の治療を受けた患者は何かしらの維持療法がなければ1年以上緩解を維持することは難しい。若い世代の患者、慢性の疾患を持つ患者、また喫煙する患者はよりステロイド依存になりやすい。しかし、クローン病の緩解維持にはステロイドは効果的ではないという圧倒的多数の証拠がある。これは従来の副腎皮質ステロイドだけでなく、放出制御できるブデソニド(controlled-release budesonide)でも同様である。 スルファサラジンやメサラジンを使った初期の治験において、薬によって緩解導入した後にはこれらの薬は緩解維持に効果的でないことが示されている。特にメサラジンは、副腎皮質ステロイドによって緩解を得た後の再燃を防ぐのに有効でない。一方アザチオプリンとメルカプトプリンは副腎皮質ステロイドの服用量減量と副腎皮質ステロイドによる緩解導入後の緩解維持の両方に有効である。もっとも、どのように服用量を最適化するかということは今後の課題であり、白血球減少を引き起こしていないかどうか、或いはメルカプトプリン代謝(6-thioguanine)をモニタリングすることは長期の治療効果を確保するのに良い手段である。 アザチオプリン2.5mg/kgとメルカプトプリン1.5mg/kgの服用は服用開始3から6ヶ月後に効果が出始める。しかし4年を超える治療効果については明確になっていない。遅延性の好中球減少症(delayed neutropenia)のリスクがあるので、服用初期においては白血球数を慎重にモニターしなくてはならない。長期においては、最低3ヶ月ごとでよい。治療開始数週間後に膵炎(pancreatitis)がおよそ3〜15%の患者に発生し、アザチオプリンかメルカプトプリンの服用を再開すると再燃する。IBDに対する(アザチオプリンやメルカプトプリンプリンなど)プリン類似体(purine analogues)の使用により癌(neoplasia)のリスクが増加するということはない。メトトレキセートによる緩解療法はデータがない。一方、シクロスポリンは緩解維持には向かない。 手術後にクローン病の再燃を遅らせる治療については証拠が増えてきている。一日3gを超える(>3g daily)スルファサラジン、あるいは一日3g以上(>=3g daily)のメサラジンの服用は手術後最長3年までの再発のリスクを減らす。20mg/gと多量のメトロニダゾールを短期間服用することも最長1年の再燃の可能性を減らす。しかし、抗生物質による治療を評価するためには、より少ない服用量の長期の治験が必要であろう。喫煙は病気の再燃に有害な影響を及ぼすため、止める事である。

手術の適応(Indication for Surgery)
手術による腸管切除、狭窄形成術、或いは膿瘍の排出は合併症や医学的に難治な疾患を治療する場合に適応となる。 結腸全摘手術とストマ造設手術(ileostomy)を除き、手術による腸管切除はめったにクローン病を"治癒("cures")"しない。そうは言っても外科治療は難治性の出血、穿孔(perforation)、慢性或いは再発性の腸閉塞、腫瘍(ドレイン手術で直らないもの) 、劇症の疾患を治療するために最大3分の2の患者に必要となる。もっともよくある腸管切除の適応例は内科治療で改善しない例や副作用(ステロイド依存症)の場合である。入院による集中治療をしたにもかかわらず7-10日以内に改善しない患者は外科手術を考えるべきである。 手術による腸管切除のあとに再発するリスクを減らせるようになったので、「手術を回避する」という名目の、効果のない内科的治療を続けることはもはや正当化できない。クローン病治療の最大の目的は患者の健康(health and well-being)を回復することである。手術による腸管切除や狭窄形成術の結果、患者のQOLは回復する。 従って満足できるQOLを安全にそして効果的に導ける、あるいは維持できる内科的治療のみが認められるのである。もし手術が迅速に、安全に、そして体と精神の更生に効果的な手順で行われたなら、患者と医師は外科手術を失敗とみなすべきではない。


議論のある諸問題(Controversial issues) クローン病の標準治療では、(標準治療として)推奨するにはデータや経験が不十分な沢山の未解決の諸問題が残っている。
1.長期にわたるクローン病の場合、発癌の可能性があるという証拠が増えているが、調査の指針がまだ定まっていない。
2.妊娠および授乳期間中のクローン病治療の安全性についての証拠が必要とされている
3.インフリキシマブ注入の最適スケジュール、治療効果の存在する期間、長期使用の安全性、またアミノサリチル酸(5-ASA)、抗生物質、ステロイド、免疫抑制剤との併用のための前提についての追加的なデータが必要とされている。
4.活動期と緩解期両方における(ペンタサ注腸(rectal mesalamine)の利点を含む)メサラジンの最適服用量と服用回数はまだ確立されていない。
5.副腎皮質ステロイドの最適服用量や服用法、anti-TNF療法、治療薬モニタリングの活用、アザチオプリンとメルカプトプリンの有効期間はまだ確立されていない。
6.メトトレキセートの服用可能量、継続服用量を知ることが必要である。
7.ブデゾナイドの長期にわたる有効性、安全性、採算性について評価が行われる必要がある。
8.活動期と(手術後を含む)緩解期の両方における抗生物質治療の更なる研究が必要である。
9.プロバイオティク療法の更なる研究が必要である。
10.シクロスポリン(cyclosporine)タクロリムス(tacrolimus)ミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate mofetil)の有効性と安全性について短期、長期の研究、また新たな免疫抑制剤を見つけることも必要である。
11.TNFやその他のサイトカインとそのレセプター、そしてNF-κBをターゲットにした新たなバイオロジカルエージェントについての更なる医学的データが必要である。
12.従来の治療法と進化中の治療法の両方を併用した治療法の比較治験が必要である。
13.内科的アプローチと外科的アプローチの治療結果を比較する研究が必要である。
14.治療法の選択の違いによる治療コストの違いを研究することが必要である。

原文Management of Crohn's Disease in Adults(注意!pdf書類)(American Journal of Gastroenterology Vol96.No.3, 2001)』
にはこれに沢山の注が付いている。
(2005年5月16日)

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